知人がFMラジオ局を立ち上げる挑戦
FMラジオ局の現実と課題
知り合いが「FMラジオ局を立ち上げる」と聞いたとき、私は正直、彼のチャレンジ精神に感心しながらも、少し心配になりました。というのも、私が知っている多くのFMラジオ局は赤字経営で、利益を上げているところを見たことがないからです。多くの場合、ラジオ愛好者が「好き」という思いだけで運営していることがほとんどです。そのため、FM局を営利目的で運営するよりも、NPO法人として支援者からの会費で運営する方が現実的だと感じています。
FMラジオ局で利益を出すのは容易ではありません。彼がどんな画期的なアイデアを持っているのか、気になります。とはいえ、彼の挑戦を応援したい気持ちも強く、「すごい!無線免許はどうするの?」と聞いてみました。すると、彼は「免許がいらない微弱電波でやります」と言いました。
微弱電波の利点と可能性
この「微弱電波での運営」という考えには大いに賛同しました。微弱電波であれば、ラジオや無線の技術に詳しい人なら簡単に運用でき、手軽にFM局を立ち上げることができます。ただし、電波が届く範囲は非常に狭く、クリアに聞こえる範囲は50mから100m程度でしょう。
正直なところ、これくらいの範囲で十分だと感じています。「いやいや、それじゃ足りないだろ!」という声が聞こえてきそうですが、私にはそれで十分なのです。
FMラジオ局における電波の重要性
微弱電波でFMラジオ局を立ち上げることは、規模が小さいながらも意義があります。実際、免許を取得して運営するFM局でも、電波が届く範囲はせいぜい10kmから20km程度です。範囲は100倍ほど違いますが、問題はその電波を利用してどれだけのリスナーがラジオを聴いているかです。
現代のFMラジオ局の現場から感じるのは、電波よりもむしろ、インターネット配信の方が重要になっているということです。周波数を合わせてラジオを聞く人よりも、スマホやPCで「リスラジ」や「TuneIn」などのアプリを通して聞いている人の方が圧倒的に多いのです。そう考えると、極論ですが「電波」はもはや不要なのかもしれません。
それでも、「FM局」と名乗るのは一種のブランディングです。これからのコミュニティFMにとって、電波の重要性はほとんど失われていくでしょう。配信、特に生配信さえできれば十分です。なお、リスラジではFM局でないとチャンネル登録ができないという話もありますが、それが問題であれば、自らアプリを開発するか、リスナーを集めるための他の企画を考える必要があるでしょう。
微弱電波が活用できるシーン
それでも、微弱電波をうまく活用できるシーンが2つあります。
1. スタジアム実況
微弱電波は、特定のエリアで限定的に使うことができるため、サッカースタジアムなどでの実況放送に最適です。スタジアムの広い場所では、何が起こっているのか分かりにくいことがありますが、ラジオを使って実況を聞くことで、より臨場感を持って試合を楽しむことができます。また、視力が弱い方にとっても耳から情報を得る手段として役立ちます。現在、こうしたサービスを提供しているチームはまだ少ないため、新たなビジネスチャンスがあるかもしれません。
2. 災害時の情報発信
一方、免許が必要なFMラジオ局は、災害時にその真価を発揮します。災害時には半径10km程度に電波が届けば十分です。100mではさすがに厳しいかも知れませんが、狭い地域でも活用する方法はあるかも知れません。特に、地元の状況や避難場所、行方不明者の情報など、地域密着型の放送が重要になります。こうしたローカルな情報は、NHKや大手民放ではカバーしきれないため、地元のFM局や防災無線が非常に重宝されます。災害時にはSNSでデマが拡散されやすいため、公共の電波を使った正確な情報提供が大きな役割を果たすでしょう。
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